※この記事は、速読に対する僕のスタンスや考え方を整理した記事の続きです。
速読についての前提や、なぜこの実践を行うことにしたのかは、
こちらの記事でまとめています。
速読という魔法を、僕は信じていた ――そして、一度手放すまでの話
この実践ログの位置づけ
この実践ログは、
「速聴をやったら能力が伸びた」という成果報告ではない。
あらかじめ言っておくと、
この10日間で、何かが劇的に変わったわけではないし、
魔法のような効果が得られたわけでもない。
今回のDAY1〜DAY10は、
速聴によって能力を伸ばす期間というよりも、
自分がどのくらいの速度を
“日常的に処理できる状態にあるのか”を
確認するためのフェイズだった。
結果として分かったのは、
2倍速で音声を「聴き取る」こと自体は、
それほど高い負荷ではなかった、という事実だ。
一方で、
- 聴き取れること
- 理解できること
- 記憶できること
- それを自分の言葉で再現できること
これらは同じ能力ではなく、
それぞれ別の処理であるという点も、はっきり見えてきた。
速聴は、
理解や記憶を一瞬で完成させる技術ではない。
あくまで「入口」を広げるための手段だと思っている。
この実践ログは、
その入口に立ったとき、実際に何が起きたのか。
何ができて、何ができなかったのか。
その途中経過を、
できるだけ誇張せず、断定せずに残した記録になる。
結論を出すのは、まだ先だ。
ここに書かれているのは、
あくまでDAY1からDAY10までの
速聴トレーニングの観察結果である。
トレーニング条件(DAY1–10)
今回の速聴トレーニングは、
以下の条件で実施した。
- 期間:DAY1〜DAY10(10日間)
- トレーニング時間:1日15分
- 使用音源:特設サイトの音声(音源1〜3)
- 再生環境:スマートフォン(タブレット)
- 再生速度:
- DAY1:1.5倍速
- DAY2:1.7倍速
- DAY3〜DAY9:1.9倍速
- DAY10:2.0倍速
基本的なルールは「音声を聴くだけ」。
途中から、以下の簡単なアウトプットを追加した。
- 印象に残った話を3行で書く
- キーワードを3つ挙げる
(正確さは求めない/抜け・間違いOK)
理解度や記憶量を数値化することはせず、
「聴いているとき、何が起きているか」を観察することを重視した。
DAY1〜DAY3:速すぎて不安になる
DAY1〜DAY3で、まず感じたのは
「聴き取れない」「難しい」といった壁ではなかった。
むしろ逆で、
あまりにも普通に聴けてしまうことへの不安だった。
DAY1では1.5倍速からスタートしたが、
正直なところ、ほとんど負荷を感じなかった。
普段から動画や音声を1.5倍速で聴くことが多いため、
特別なトレーニングをしている感覚がない。
DAY2で1.7倍速、DAY3で1.9倍速に上げても、
体感としては大きな変化がない。
- 1.5倍速と1.7倍速の違いが分からない
- 1.7倍速と1.9倍速も、ほぼ判別できない
「どちらが速いか当ててください」と言われたら、
正直、自信はない。
この時点で出てきた疑問は、かなり率直なものだった。
これ、ちゃんとトレーニングになっているのだろうか?
多くの人が
「速くて聴き取れない」「ついていけない」
という壁にぶつかる中で、
自分はまったく別の理由で立ち止まっている。
聴き取れてしまうからこそ、
負荷が足りていないのではないか。
耳がすでに慣れすぎているのではないか。
この段階ではまだ、
- 速聴が有効かどうか
- このまま続けて意味があるのか
判断はつかなかった。
ただひとつ言えるのは、
「聴き取れる=何かを理解・記憶できている」
という感覚は、まだまったく掴めていなかったということだ。
この違和感が、
次の実践ログの検証にて、大きな気づきにつながっていく。
DAY4〜DAY6:聴ける=覚えられる、ではない
DAY4あたりから、
速聴トレーニングに対する見え方が大きく変わり始めた。
音源を変えても、1.9倍速でも、
音としては問題なく聴き取れている。
ここまでは、DAY1〜DAY3と変わらない。
ただ、この頃からはっきりしてきたのが、
「聴き取れること」と「覚えられること」は、
まったく別の処理だという感覚だった。
話の流れや大筋は理解できている。
内容も、なんとなく頭には入っている。
けれど、
- 「さっき何を言っていたか」
- 「具体的にどんな話だったか」
と聞かれると、
言葉として再現しようとした瞬間に、詰まる。
同じ音源を何度か聴いているはずなのに、
「あれ、こんな話してたっけ?」
という場面も、普通に起きる。
この時点で気づいたのは、
速聴によって起きているのは、
理解や記憶の完成ではなく、入力の高速化だということだった。
この頃から、
「聴き取れる/聴き取れない」という軸よりも、
- どこまで理解できているか
- 何が記憶に残っているか
- それを言語化できるか
といった、別の軸が前に出てくる。
試しに、
「印象に残った話を3行で書く」
「キーワードを3つ挙げる」
という簡単なアウトプットを加えてみた。
すると、さらに分かりやすくなる。
- 聴いているときは分かっている“つもり”
- いざ書こうとすると、抜け落ちている部分が多い
聴き取れているからといって、
理解や記憶が自動で完成するわけではない。
これは、
以前速読で感じた違和感と、とてもよく似ていた。
速聴は、
理解や記憶をショートカットする技術ではない。
できるのは、
「情報が入ってくる入口を広げること」まで。
そこから先――
理解を深めたり、記憶を定着させたりするには、
結局のところ、
- 考える時間
- 整理する時間
- アウトプットする時間
が必要になる。
このフェイズで見えてきたのは、
速聴の限界ではなく、
速聴の役割がどこにあるのかだった。
DAY7〜DAY9:記憶と出力が主役になる
DAY7あたりから、
速聴トレーニングの「主役」が、
いつの間にか入れ替わっていることに気づいた。
もはや、
- 聴き取れるかどうか
- 速度についていけるかどうか
このあたりは、ほとんど問題になっていない。
代わりに前に出てきたのは、
- 何が記憶に残っているか
- どこをアウトプットできるか
- 何を拾い、何を捨てているのか
という、出力側の悩みだった。
同じ音源を数日続けて聴くと、
話の流れや大枠は、少しずつ安定してくる。
ただし、それは
「全部を覚えている」という状態ではない。
印象に残る場面や言葉は、確かにある。
一方で、細かいディテールは、普通に抜け落ちる。
ここで強く感じたのは、
速聴は“何でも覚えられる状態”を作るものではない
ということだ。
このフェイズで、特に分かりやすかったのが
「知らない言葉」に対する反応だった。
音としては聴き取れている。
でも、その意味が分からない。
何度聴いても、
- それが何を指す言葉なのか
- どんな漢字が使われているのか
想像できない。
文字で見ないと理解できないものは、
速く聴いても、やはり分からない。
ここでも、
知識・経験・語彙が理解を支えている、
という当たり前の事実を再確認することになる。
この頃には、
速聴トレーニングというよりも、
「限られた時間の中で、
どこを拾い、どこを捨てるかを選ぶ練習」
をしている感覚に近くなっていた。
聴く速度そのものより、
記憶と出力の配分の方が、
はるかに難しく、はるかに重要になっていた。
この変化は、
速聴が無意味だという証拠ではない。
むしろ、
速聴の役割が
「すべてを覚えること」ではなく、
全体像を素早く掴むことにあると、
はっきり示していた。
DAY10:2倍速は日常、課題は残る
DAY10では、
再生速度を2.0倍速に上げてトレーニングを行った。
ここまで何度も聴いてきた音源ということもあり、
2倍速でも、音として聴き取ること自体に大きな違和感はない。
少なくとも、
- 速すぎて内容が分からない
- ついていけない
といった感覚は、ほとんどなかった。
この時点で、
「聴き取る速度」という意味での前提条件は、
ひとまずクリアできていると感じた。
ただし、課題は残る。
聴き取れているからといって、
すべてを正確に覚えられるわけではない。
- 印象に残る話はある
- 流れは大まかに分かる
- でも、細部までは再現できない
この感覚は、DAY4以降ずっと変わっていない。
2倍速であっても、
理解や記憶が自動的に完成することはない。
ここで改めて、
速聴の役割がはっきりした。
速聴は、
入力の速度を上げる技術であって、
理解や記憶を一瞬で完成させる技術ではない。
DAY10は、
その事実を確認してフェイズ1を終える、
ちょうどいい区切りになった。
暫定的な結論(断定しない)
DAY1〜DAY10を通して、
現時点で言えることを整理すると、次のようになる。
- 僕の場合、前提速度(音声を聴き取る速度)は、すでに日常レベルにあった
- 速聴によって、入力そのものが劇的に変わったわけではない
- 一方で、速聴は「入口を広げる」効果を持っている
特に感じたのは、
速聴はアウトプットの時間を確保するための技術
だという点だ。
理解や記憶の精度を少し落とす代わりに、
短時間で全体像を掴む。
その分、
- 考える
- 整理する
- 書く
- 話す
といった工程に、
より多くの時間を回せる。
これは、
速読について考えてきた中で辿り着いた考え方とも、
自然につながっている。
ただし、
これはあくまで、DAY1からDAY10までの
実践ログの観察結果にすぎない。
速聴(=速読)の評価を
確定させるには、まだ早い。
次のフェイズで見るポイント
次回の実践ログ(DAY11以降)では、
次の点を意識してトレーニングを続ける予定だ。
- 初見の音源を、2倍速で聴いたときの出力はどうなるか
- 音源の情報量が増えた場合、理解と記憶はどこまで維持できるか
- アウトプットの型を固定すると、定着度は変わるのか
速聴が、
- どの場面で有効なのか
- どこから先は別の工程が必要なのか
その境界線を、
もう少しはっきりさせていきたい。
今回はDAY1〜DAY10までの記録をまとめた。
DAY11以降もトレーニングは続くので、
ある程度まとまったタイミングで、
同じように実践ログとして記録する予定だ。
今回の実践ログは、ここまでとする。
